素描 Drawing

 Drawingは鉛筆、木炭、パステル、チョークなど乾いた固形物を使って、作者にとって直接的に浮かんだ最初の構想を、本質的な要素として、形(form)、動き(movement)、比例(proportion)、調子(ton)、均衡(balance)、奥行(perspective)、輪郭(contour)、明暗(clair obscur)、黒白(noir et blanc)などのバランスをとりながら行います。黒あるいはセピアなどの単色で、紙面へ比較的簡易に描き出したもので、彩色が施されることも時にはあります。

素描   Drawing(英), Dessin(仏)

 

  描く目的によってクロッキーcroquis(仏)、スケッチsketch(英)、完成作品の下絵のエスキースesquisse(仏)、粗描のエボーシュesquisse(仏)、芸術作品の対象となるものを研究する習作のエチュードétude(仏)、モザイクやフレスコでは粗塗り漆喰の上に直に描かれた原寸大下絵はシノピアsinopia(仏)、紙に描かれた同寸大下絵のカルトンcarton(仏)と呼ばれ、実に多種多様です。Paintingの下描きに使用する場合はUnder Drawing(下描き)とも言います。
 絵画、彫刻、デザイン、工芸、建築などあらゆる美術の分野でその核心となる作業です。Picture(絵画)の中ではPainting とDrawingは対をなすものと言えます。Paintingとは水彩、テンペラ画、油彩画など、絵具を水や油などの液体で伸ばして、筆などで着彩する作業全般のことです。従って色彩の問題が極めて大きく関わってきます。
 これらの点では調和・理性・美・秩序を礼賛したGolden age of Art(アートの黄金時代)のギリシア時代の名残が今も継承され続けているのです。いずれにせよデッサンは本来創作の予備的、準備的段階における副産物でしたが、近代では、特有の芸術的価値が認識され、素描自体を目的とする作品も現れて独立した絵画の一分野と見なされるようになってきたのです。
 
紙に描かれた同寸大下絵のカルトンcarton(仏)
 
 

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