ワニス Varnish

 ワニスの語源 

 ワニスの語源は諸説ありますが、古くは紀元前3世紀エジプトで、戦争の勝利を祈願するために、美しい金髪の女性ベレニス(Berenice)の髪をヴィーナスの神に捧げた故事に因んで、その後琥珀やコパールなど黄金色の美しい化石樹脂を「ベレニス」と形容するようになったという説があり、それが変化して”Vernish”となり現在に至っています。  古代エジプト時代、王家のミイラを作る際、ミルラ「没薬」やフランキンセンス「乳香」アロエ、シーダー油などが死体に塗布されたことが確かめられています。それらはミイラの防腐作用のためだけではなく、硬化させて形を永遠に保つためでもあり、また、呪術的・香料的な意味も含まれていました。

ワニスの目的

ワニスの最も基本的な目的は、絵画・工芸品を空気中の湿度や温度から守ることでした。また、塗膜の厚みによる屈折率の変化によって表面に装飾的な輝きを与え、時にはワニスで表面の凹凸を埋め、画面に平面性を与えるために塗られたこともありました。また、テンペラにおいては、ワニスを塗ることで顔料本来の濡れ色を発揮させ、画面の明度対比の調整をしたのです。

ワニスの構成 -油と樹脂の混合-

現在あらゆる用途に用いられているワニスは、作るうえで最も大切なのは油と樹脂の選択と比率です。油分が多いワニスは木の大きな動きに順応するためより順応性があるために、よくアウトドアで使われるのを意図されており、柔軟性や順応性が必要とされています。油分が少ないワニスは、極度の木の動きはない室内において、堅固な塗装が要求されるため被膜は固く、しかも脆くなります。樹脂の役割を鉄筋コンクリートに例えると、樹脂分が「鉄骨」で、ゆっくり固まる乾性油が「コンクリート」です。鉄だけでは曲がってしまい、コンクリートだけでは割れてしまいます。その両方が備わってこそ、強固な画面が形成されるのです。

 油絵で使用されるワニスは煮込まれて硬化したあるいは加減して半硬化した油に樹脂を加えて出来ます。天然樹脂を使用したワニスには油(リンシードオイル、テレピン油など)に樹脂を溶解させたオイルワニス(油性ワニス)とエチルアルコール(酒精)で溶解したアルコールワニス(酒精ワニス)とに大きく分けることができます。19世紀に入ってからは、天然樹脂と合成樹脂を混合したものも作られました。

樹脂 Resin

仕上げ用ワニス(タブロー

 ワニスをかける目的は、画面の光沢調整と保護の二つです。描きあがった油彩画面にはたいてい光沢の部分的なムラがあります。そこにワニスをかけると光沢が統一されます。また、作品はつねに大気中の汚れや画面に有害なガスの影響にさらされます。大気中の汚れはワニスの表面に吸着され、画面の変色劣化を防ぎ、絵画そのものは汚されません。ワニス表面が汚れてきたら、溶剤で層を除去し、新しく塗り直すと、描きたての画面が復活します。また、塗布後は作品の通気性を遮り、絵画層の乾燥が滞るので、作品完成後、最低半年は乾燥期間をおいてから塗布します。どうしても完成間もない時期に塗布したい場合、テレピンで薄めるか、後述の加筆用ニスを仮引きとして塗ります。

加筆用ワニス(ルツーセ)

油絵具の皮膜の上に絵具を重ねると、弾かれてしまってうまくのらない時や、乾燥前と後では、絵具の色艶が微妙に変化するから、新しい色を塗るときに色が狂ってしまう時に、画面に加筆用ワニス(ルツーセ)を塗布し、画面を濡らすことで作業しやすくなります。ルツーセは通常、若干のダンマルとテレピンから作られており、タブローの非常に薄いものです。1度塗布であれば、その薄い層は空気を通すので、仮の保護ワニスとしても活用できます。

描画ワニス=油性メディウム=調合画用液

描画ワニス=油性メディウム=調合画用液

 描画の際に使用するメディウムを「調合画用液」ともいいます。絵具の粘度、光沢、乾燥速度などを調整するために、主に乾性油、揮発油、樹脂を適切に配合して絵具に混ぜて塗ります。その効果は絵具の練り調子やノビをよくすると共に顔料と支持体の定着を強め、油絵特有の艶を与えます。基本的には揮発性油と混ぜながら使用し、仕上げに近づくにつれ油の比率を高めてゆきます。その割合は制作段階によっても変わり、画家によってそれぞれ異なります。このワニスによって油彩画最大の特徴であるGlazing効果を生み出すことができるのです。

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Gilding 金箔技術

 

我々が最も憧れを持つ金
何故憧れを持つのか?この金属の持つ品と暖かみが存在感を表し、彼の世界を彷彿させるからなのでしょうか?
自然界ではこのようにひっそりと存在しています。(中央に見える小さな物質が金です。)

 

金は永遠という印象を与え、魔力を持つものとしても崇拝され続け、そして最も価値のある金属と考えられ、特権階級の象徴としてとらえられてきました。まさしくツタンカーメン王墓の豪華な金製品などはその象徴そのものです。  その利用価値の高さゆえに豊かさと富の象徴であり、歴史的にみても人間の欲望から、金そのものや採掘の権利などを巡る争奪・紛争が、個人間から国家間の規模に至るまでしばしば引き起こされました。現在においても金を最も保有する国は世界経済をも左右すると言われるほどです。

やがて財力としての価値が見いだされるようになると、新たに金を採掘するよりも、身近な金属や物質から容易に金を作り出す研究が錬金術として試みられるようになりました。錬金術師達は金を生み出せる物質に「賢者の石」という名をつけ、それを作ることに夢中になりましたが、その試みは全て失敗に終わりました。しかしそこで得られた多くの成果は今日の化学や物理学の礎となったわけです。<

中世では単なる1つの色彩としてではなく神聖の象徴として絵画や額縁にも。また、装飾品として数多く利用されてきました。 しかし、金そのものは高価すぎるために、鍍金すなわち金メッキを施してゆくのです。

金箔を使った基本的な技法

これらの技法は下地が柔らかく、柔軟性のある石膏だからこそ可能な技法です。
 

刻印技法(Punching)金属製や木製の様々な模様の刻印棒などを使って上から叩いて金箔の表面に刻印を打って模様を作る技で、繊細な模様が可能となります。写真では梨地のようですが、模様の刻印棒を用いれば様々な模様の印も打つことが出来ます。

punching
パスティーリャ技法(Pastiglia)
石膏を筆で装飾模様に盛り上げて載せてゆく浅い浮き彫り装飾です。重ねたり削ったりして作ってゆくことも出来ます。
pastiglia
グラッフィート技法 Sgraffito(Tecnica a Graffito)
磨いた金箔の上からテンペラ絵具を塗り、そして串などで引っ掻いて絵具をとってゆく技法です。それにより金色と絵具の色が強く対比された模様の美しさが可能になります。
sgraffito
ミッショーネ技法(Tecnica a Missione)
ミッショーネ技法とは、テンペラ絵具等の上から水性や油性のニスで画面に筆で模様を描き、一定の時間を置いた後にその上から金箔を置いて固定するものです。乾いた後で、ニスで塗った場所以外の部分は筆で軽く掃くと余計な金箔は取り除けます。水押し技法に比べて比較的に工程は少なく細かな模様を金箔で表現出来ます。
missione

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