Gilding 金箔技術

 

我々が最も憧れを持つ金
何故憧れを持つのか?この金属の持つ品と暖かみが存在感を表し、彼の世界を彷彿させるからなのでしょうか?
自然界ではこのようにひっそりと存在しています。(中央に見える小さな物質が金です。)

 

金は永遠という印象を与え、魔力を持つものとしても崇拝され続け、そして最も価値のある金属と考えられ、特権階級の象徴としてとらえられてきました。まさしくツタンカーメン王墓の豪華な金製品などはその象徴そのものです。  その利用価値の高さゆえに豊かさと富の象徴であり、歴史的にみても人間の欲望から、金そのものや採掘の権利などを巡る争奪・紛争が、個人間から国家間の規模に至るまでしばしば引き起こされました。現在においても金を最も保有する国は世界経済をも左右すると言われるほどです。

やがて財力としての価値が見いだされるようになると、新たに金を採掘するよりも、身近な金属や物質から容易に金を作り出す研究が錬金術として試みられるようになりました。錬金術師達は金を生み出せる物質に「賢者の石」という名をつけ、それを作ることに夢中になりましたが、その試みは全て失敗に終わりました。しかしそこで得られた多くの成果は今日の化学や物理学の礎となったわけです。<

中世では単なる1つの色彩としてではなく神聖の象徴として絵画や額縁にも。また、装飾品として数多く利用されてきました。 しかし、金そのものは高価すぎるために、鍍金すなわち金メッキを施してゆくのです。

金箔を使った基本的な技法

これらの技法は下地が柔らかく、柔軟性のある石膏だからこそ可能な技法です。
 

刻印技法(Punching)金属製や木製の様々な模様の刻印棒などを使って上から叩いて金箔の表面に刻印を打って模様を作る技で、繊細な模様が可能となります。写真では梨地のようですが、模様の刻印棒を用いれば様々な模様の印も打つことが出来ます。

punching
パスティーリャ技法(Pastiglia)
石膏を筆で装飾模様に盛り上げて載せてゆく浅い浮き彫り装飾です。重ねたり削ったりして作ってゆくことも出来ます。
pastiglia
グラッフィート技法 Sgraffito(Tecnica a Graffito)
磨いた金箔の上からテンペラ絵具を塗り、そして串などで引っ掻いて絵具をとってゆく技法です。それにより金色と絵具の色が強く対比された模様の美しさが可能になります。
sgraffito
ミッショーネ技法(Tecnica a Missione)
ミッショーネ技法とは、テンペラ絵具等の上から水性や油性のニスで画面に筆で模様を描き、一定の時間を置いた後にその上から金箔を置いて固定するものです。乾いた後で、ニスで塗った場所以外の部分は筆で軽く掃くと余計な金箔は取り除けます。水押し技法に比べて比較的に工程は少なく細かな模様を金箔で表現出来ます。
missione

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鶏卵 EGG

卵黄 Egg Yolk
テンペラ・マグラ  
(Tempera magra)

  magraとはイタリア語の(痩せたとかほっそりとした)という意味があります。 5世紀から15世紀にかけての長い歴史の中で多くの画家たちによって使われ続けられ、数々の名作がこの技法によって生まれています。テンペラ画といえば大半がこの卵黄をメディウムを使ったものを指すと言っても過言ではありません。生活の中でこんなに身近にある素材を使って描かれていたとは、きっと思ってもみなかったことでしょう。。
使用するときに少量の水を加えて絵具の流動性をよくします。描くのに使い慣れるにつれて濃い薄い好みの混ぜ具合がわかるようになります。水を加える主目的は卵黄にわずかにある脂気をとり、完全な液体にして流動性を増して描くやすくするためです。 卵黄は濡れているうちは水に溶け、やがて水が蒸発して中に浮遊している脂がゆっくり硬化するので、乾いてからやがて防水性のある硬い被膜になります。

卵黄+油性分        
テンペラ・グラッサ     
(Tempera Grassa)

grassaはイタリア語のgrasso(油分を含む)という意味で、15世紀のルネッサンス期には、より自然主義的な写実表現にマッチした絵具に改良され、卵のメディウムに油性分を加え、絵具の伸びを改善する処方が開発されました。油性分の混合により油絵具との併用も可能になりますが、卵黄テンペラに比べやや暗い発色になります。 加える油性分の量を調節することで、画面の発色を明るく、または、暗い濡れ色にすることもできるようになりました。伸びのあるメディウムで描きやすく、テンペラ画の中で最も堅牢性が高く、仕上げの最終ワニスの効果が描画中から確認しやすいという利点もあります。その代表的なものはボッティッチェリの「春」や「ビーナスの誕生」などです。彼の晩年の作品が暗い傾向にあるのは、テーマの変化と共に、油性分をやや多めに調整をしたからです。

全卵+油性分        
テンペラ・ミスタ   
(Tempera Mista)

mistaはイタリア語のmisto(混合の、混成の)の意味です。 全卵を用いた処方です。これは卵と等量のダンマルワニス、または油、スタンドオイル、又は油性ワニスを卵に加えて全体をよくふり混ぜたものです。使用時には少量の水を加えます。エマルジョンの質が良く、冷蔵庫で1ヶ月程保存が可能です。 初期の油絵具は、透明性に富んでいたもののボディー感が希薄であったことは作品からうかがえます。イタリアではテンペラを部分的に彩色として使用されたのに対しフランドルでは、テンペラ絵具と油絵具の互層として絵が構成されました。このメディウムは全卵に樹脂と油を加えて作ります。テンペラによる下絵に油絵具のグラッシがのり、またテンペラ絵具による描起こしを行い、さらに油絵具のグラッシを重ねると言う工程を数度重ねて、テンペラと油絵具特長を生かした幅の広い表現を可能にしたのです。油によって重ねられた画面はしっとりとした濡れ色になり、そのグレーズによる発色の美しさは、現在においても特筆に価します。ファン・アイクの頃に発見され、これが油彩画の発端ともいわれています。 全卵   1個分(通常サイズでは50ml)  油性分 50ml(例えばダマール樹脂溶液70%、スタンド亜麻仁油30%)  水    2~4容量

卵白   Glair

Egg White   

卵白は卵黄と分けて器に入れ、泡立て器でよく掻き混ぜ全体を泡だらけにします。そのまま冷所におき、一昼夜待って卵白の液部が泡から沈むのを待って、沈殿した液のみを容器に入れて用います。 このメディウムは油脂分が少なく透明で、そして脆弱で水に溶け易い物質です。羊皮紙のように薄くてしなる支持体に描かれる場合が多いため、厚塗りは避け、基本的には一層目から固有色で塗ってゆきます。極めて上品で顔料の質を美しく保つので白などの明るい色に用いたり、ある種の顔料の性質を存分に引き出すためには濃度が足りないために、アラビアゴムを添加する場合もあります。また、金箔技術のボーロを溶くのに用いられることもあります。 参考文献  トンプソン  テンペラ画の実際  デルナー     尾藤衝己

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